

著者:西村幸夫 編著、編集協力(財)日本交通公社
出版社:学芸出版社
金額:3,000円
従来、地域社会の構成員のあいだの運動であり、地域環境を保全する運動である「まちづくり」と、活動の主体が観光事業者であり、事業全体が経営的視点で語られ、地域環境の問題については多くが資源という側面での対応であった「観光」には、その視点の違いなどにより摩擦が生じることも多かった。しかしながら、人口減少による地域経済の縮小や地方財政の悪化など、地域経済の不安定化が進む中で、定住人口だけでなく交流人口を対象とした「まちづくり」が求められるようになった。一方で、観光地・観光事業者も旅行の多様化により、従来的な観光ではない新しいスタイルの観光が求められるようになった。このような時代の変化の中で、今「まちづくり」と「観光」の垣根を超えた取り組みが各地で進められている。
本書は、観光からまちづくりへ、まちづくりから観光へ、双方からの視点を織り交ぜながら「観光まちづくり」の将来像を模索するものである。「観光まちづくり」に関する総論から、日本各地での事例、推進体制のあり方まで幅広く触れられている。「観光」に携わる人々にも「まちづくり」に携わる人々にとっても、非常に参考になる書といえる。
インバウンド業界に携わる人々に対しても、本書をぜひお勧めしたい。「観光まちづくり」に必要不可欠である交流人口の中には、もちろん外国人も含まれる。本書では、インバウンドの視点は多く語られてはいないが、地域住民だけでなく観光事業者と外国人観光客の間ですら摩擦が生じやすいのがインバウンドである。「観光」「まちづくり」という垣根を越えた取り組み、その方法や課題を知ることはインバウンド事業者にとっても有益であろう。また、インバウンドを取り込もうと考える地域の方にとっても、日本人だから外国人だからということではなく、「観光まちづくり」として地域に目を向け、活動する参考になるのではないだろうか。