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書評

生活者発想塾

著者:博報堂生活総合研究所
出版社:日本経済新聞出版社
金額:1,300円

 人間を生活のまるごと観る。「生活者発想」とは、生活者への多面的洞察を通じて暮らしの未来を予見するために博報堂生活総研が標榜しているものの見方である。私たちはみな「消費者」である前に、子どもを持つ親、仕事上の生産者、地域コミュニティの一員、趣味のサークルメンバーという多面的な側面を持っている。人を「消費者」という一面でとらえるのではなく、多面的な暮らしを営む存在として、まるごと捉えよう、という考え方である。

 この視点をインバウンド・マーケティングに応用するとどうだろうか。

 私たちは、往々にしてプロモーションのターゲットを「アメリカ人FIT(個人旅行者)」、「韓国人女性訪日リピーター」、「中国人富裕層」などのくくりで表現する。しかし、「アメリカ人FIT」といっても例えば「23歳男子学生、将来の夢はIT系会社設立、卒業前の時間に、なんとなく面白そうなアジアを周遊する中で日本にも立ち寄る」という人もいれば、「60代夫婦、仕事も子育ても一段落、兼ねてから興味のあった日本の盆栽というものを2人で勉強してみたい」という人もいるだろう。彼らの生活、人生の1ページに「訪日旅行」がある、ということを意識する。その人生、生活背景を多面的に捉え、訪日旅行における需要に思いを巡らせる。

 中国人旅行者が家電量販店で5つも6つも炊飯器を購入し、大量に持って帰るという話が有名だ。日本人の常識から考えると不可解な行動に思えるが、彼らの多くは何家族かで同居をしており、その家族へのお土産が必要だと考えるとすんなりと理解がしやすい。旅行者が日本に到着してからの行動だけを切り取って考えるのではなく、その行動の背景にある自国での生活の仕方を理解することが、インバウンド・ビジネスの成功の秘訣である。

 世界各国のあらゆる生活背景を調べ生活者の意識を調査するのは至難の業であるが、ターゲットを絞ることで現実味が増すだろう。需要は様々である。視点を変えることにより新たなビジネスのヒントを得たいと考えている方には特にお勧めの本である。