

著者:電通abic project編
出版社:有斐閣
金額:2,100円
政権交代を迎えてから、一層「地方分権」「地域再生」を叫ぶ声が高まっている。少子高齢化、過疎化に伴う財政破綻など、地方を取り巻く環境は厳しい。この現状を打開するキーワードは、「地域ブランド」である。
本書は、電通中部支社と大学教授による「地域ブランドマネジメント」をテーマとした産学共同プロジェクトの成果報告書を書籍化したものである。いかに人々を地域に呼び込むか、リピーターとなってもらうか。 本書は、主に国内向けにまとめられたものであるが、インバウンドに当てはめた場合でも本質は同じである。
地域ブランドの定義は、『その地域が独自に持つ歴史や文化、自然、産業、生活、人のコミュニティといった地域資産を、体験の「場」を通じて、精神的な価値へと結びつけることで、「買いたい」「訪れたい」「交流したい」「住みたい」を誘発するまち。』であるという。よく地方を訪れると、「目玉の観光資源がない」や「交通の便が悪い」から集客できない、といった声を聞く。ただ本当にそうであろうか?
著者も言っている通り、世界遺産などの際立った観光資源が必要なのではなく、都市が忘れかけた(インバウンドでは特に、日本人自身が忘れかけている)風景や空気感、そして精神性といったものが、大切な資産となりうるのである。
重要なのは、見えない地域資産を掘り起こし(地域資産の棚卸し)、社会文化文脈(時代のトレンド)をすり合わせ、新たな価値へとつなげていくための体験価値の場をどのようにデザインするか。「地域らしさ」を表現していくかが問われているのだ。これは「地域ブランド・コンセプト」にもつながる。そしてこの「地域ブランド・コンセプト」を、訪問者に的確に伝えていくことで、良好なコミュニケーションが成立し、ブランド化、すなわちリピート化が実現するのである。これは、インバウンド・プロモーションの要諦である。
「伊賀の里・宮崎県・直島」の事例のように、顧客と長期継続的な関係を築くためにも、本書から、エッセンスを取り出し、日々のプロモーション活動に役立てていくことが望まれる。