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書評

アニメ文化外交

著者:櫻井孝昌
出版社:筑摩書房
金額:760円

 今、日本のアニメが海外で熱い。しかし、その実態を一番知らないのは案外日本人ではないか。本書はコンテンツメディアプロデューサーの著者が、世界各地で日本のアニメについて講演し、熱心なファンと直に触れ合った体験をもとに、日本のアニメのあり方・発信方法ついて考えを巡らせたものである。

 まず想像していた以上に日本のアニメが海外でウケていることに驚いた。たとえばバルセロナでは、著者の講演に六万人以上の人が集まったという。特に海外でいかに創意工夫を凝らしてアニメを受信しているかというエピソードからは、現地のファンの強い思いがひしひしと伝わってくる。ラオスの少年少女は『NARUTO』(注1)を対岸のタイのテレビ放送を受信して視聴し、サウジアラビアでは大半の人が違法サイトや違法ダウンロードを通じて見ているという。さらにヨーロッパで開催されている日本のアニメやマンガを機軸にしたイベントの中で最大級と言えるパリの「ジャパン・エキスポ」では原宿系ファッションも大流行らしい。多くの日本人のどこかに、ファッションに対する“西洋コンプレックス”が根強く残っている中で、勇気付けられる話である。本書ではこういった日本文化のパワーを再認識させられる面白い実例が豊富に紹介されている。

 日本のアニメには、友情や正義は何か、人と人とが争い会うことの愚かさを主題とするものがたくさんある。そういった作品を通して、異なる言葉や習慣をもつ人の心がつながり、「カワイイ」、「セツナイ」といったフィーリングが共有されることが平和にも貢献すると筆者は述べている。しかし、日本は「売り込みベタ」と筆者は言う。たとえば先述のジャパン・エキスポで韓国のブースではマンガ家のサイン会が開催されているのに対し、日本のブースは質素だったようだ。国境を越えて人々の心を動かす力をもったマンガは日本の貴重な財産だ。心を込めて伝えていきたいものである。

注1:NARUTO
「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて1999年より連載している岸本斉史作の人気漫画。テレビアニメは2002年から2007年まで「NARUTO-ナルト-」が放送され、2009年から続編の「NARUTO-ナルト-疾風伝」が放送されている。